【 ＳＩＬＥＮＴ 】
このチーズケーキ最高だね。 お店に並べたら売れるんじゃないの？
「ううん、こういうのはお店で売れるものじゃないの・・・」
美味しいチーズケーキを作ってくれた。
手作りの良さは、味の好みや材料を加減できることだけだと思っていた。
使う砂糖を黒砂糖に変え、ハチミツをとブランデーを少し加え、
土台となるビスケット生地から拘り、見た目よりも栄養価と風味を重視したものだった。
ある日、作り方を教わった。
しかし、同じようには出来なかった。
何度やってみても、似てはいるが、どこか違ってしまう。
味も形も。
料理のセンスの問題かと思っていたが、それだけではなかったようだ。
その理由を彼女に訊こうかと思ったが、ふと怖さのような感覚が頭をよぎり、黙った。
訊いてしまったら、もう後戻りの出来ない何かが始まってしまうようで・・・・。
しかし、それは杞憂だった。
とうに気づかれていた。
沈黙。
それが愛情の量の差を現しているということに。
yoshi