【 幾つになっても男と女 】
結婚式に出席した日の夕方。
犬を連れて近所を散歩していた時のことだった。
とても感動的な式であったと、感慨に浸りながら歩いていた。
ふと、通りの横の路地に目をやると、同じく散歩をしている年配の夫婦がいた。
歳の頃は60代前半といったところだろうか。
特に洒落たところもなく、失礼ながら、どこにでもいそうなオジサンとオバサンという感じであった。
本当は散歩ではなく、ウオーキングと言った方がいいのかもしれないが、
たいがいがオバサン同士で喋りながら横に連なって歩いていることが多く、
中高年の夫婦が仲睦まじく散歩する姿を見かけることは極めて珍しかった。
そして、特に気を止めることもなく通り過ぎようとしたとき、その夫婦のある姿に目が釘付けとなった。
なんと、その夫婦、手をつないで歩いているのだった。
その意外さに、えっ、と声が出そうになるほど驚いた。
思わず立ち止まって、後ろを振り返ってしまうほどだった。
嘘だろ、ありえない・・・。
呆気にとられて見続けていたら、向こうも気付いたらしく、オバサンがほんのりニコっとした表情で会釈を返してきてくれた。
年甲斐にも無く、恥ずかしくはないのだろうかと疑問に思った自分が、かえって恥ずかしく思えてくる。
どこにでもいそうなオジサンとオバサンだったが、揺るぎの無い価値感と、
恋にときめく少年少女のような若々しい感性を愉しんでいたのだったと思う。
もちろん、いやらしさなどは微塵も感じられず、あたりまえとなっている。
きっと、これが、長い間をかけて積み重ねてきたふたりのスタイルなのだろう。
ふたりを結ぶ、芯となるものが形を変えて、さりげないところにもしっかりと現れている。
こんな凄い夫婦が町内にいるんだと思うと、うれしくも感服した。
幾つになっても、男と女。
そんなあたりまえのことが、つまらない社会通念のフィルターで曇らせられ、人の心の機微を見え辛くしていたことに気付く。
yoshi
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