【  ただ寂しかっただけ 】

 

 「わたしのこと、すこしはわかってよ・・・」

認めてくれないと辛くなってしまう。

褒めてくれないと落ち込んでしまう。

そして、求めれば求めるほど離れていってしまう。

好きならば、わたしの為の存在になって欲しい。

愛とは、そういうものだと思っていた。

しかし、いつしか相手に左右される自分になっていた。

心は荒波に翻弄される小船のように激しく揺れ続けていた。

そして、力尽き、なすがままに沈んでいった。

このまま海の藻屑として忘れ去られてしまうのか。

だけど、そう思ってしまう自分を責めることはやめにしたい。

これでいい。十分なんだと。

波の流れに逆らう、生暖かい海風が飛沫を吹き上げ、潮の香りが通り過ぎていく。

ほんとうは寂しかったんだよ。

陽昏の砂浜をひとり歩いていると思い浮かぶ。

遠い向こう側にいるひとへ。

寂しかったんだ。

ずっと寂しかったんだ。

やっぱり寂しかったんだ。

とっても寂しかったんだ。

とっても、とっても寂しかったんだ。

ずっと、ずっと寂しかったんだ。

そういうこと・・・・。

寂しかった。

ただそれだけのことだったんだ。

yoshi

 

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