【  何も語らずとも 】

 

 心を満たすことには大きく分けて、ふたつの種類がある。

人と関わることによって。

人と関わらないことによって。

人と関わることとは、会社、家族、友人などと交流することによって得られ、

人と関わらないこととは、ヨガや瞑想など、ひとりで向き合う時間によって得られる。

とかく、どちらかに偏りがちなところがあり、交友関係が充実すると賑やかで楽しいのだが、

ひとりで過ごす時間が少なくなり、息苦しく感じることもある。

逆に、ひとりの時間を過ごす愉しみは自由を謳歌できる反面、寂しさを感じることもある。

大事なことは、一方に偏らないバランスとなるのだろう。

今日は静かにひとりで過ごしたい。

夫婦であっても、いつもいつも一緒でなくていい。

恋人であっても、いつもいつも連絡を取り合っていなくていい。

別々に過ごした時間を、あとで共有できる愉しみというものがある。

ときに、今日はなんとなく寂しいから傍に居て欲しいと思う日もある。

そういう日は機嫌をとろうなどと、気にかけてくれなくていい。

傍に居てくれるだけ。

こちらからすれば、好きなことをしている横に居させて貰う、という感覚。

それが今はいちばん気持ちのいい過ごし方なのだと、伝えあえる関係。

そういう日のある、ふたりは、とても素敵だ。

やさしい言葉の慰めなどなく、ただ近くにいて、寄り添ってくれているということ。

それが、どれだけの安らぎをもたらすことか。

何も語らずとも愛に包まれ、自信を育ててくれる。

そうして、さらにふたりの思いを寄せていく関係。

静かさと、ささいな気持ちと、おだやかな時間の中で育まれていくもの。

愛とは、そういうもの・・・・。

淹れたての珈琲の香り漂う部屋で、そんなことをぼんやりと思い浮かべてみた。

yoshi

 

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