【  いざない 】   Dedicated to Mitsuko.

 

 ピアノのやさしい旋律が思い出されてくる。

新緑が映る湖面を軽やかに揺する、さわやかな風。

部屋の窓を開け、澄んだ山の息吹に心はずませる。

さわやかな朝陽が湖畔をきらめかせ、生い茂る深い木々が過ぎ去った時へといざなう。

いろいろあった・・・・。

そうとしか、いえない。

でも、いまは、いいね。

ようやく・・・・。

湖の対岸には高い山々が連なっている。

秋にはススキが生い茂り、また褪せた懐かしさをいざなうのだろう。

いろいろあった・・・・。

いまはまだ、そういっておきたい。

でも、いつか。

もう一度・・・・。

ふと自然に自分だけのメロディが聴こえ始めてくる。

小鳥たちがさえずり、木々が奏で、風が運んできてくれるかのように。

湖面を渡り、緑をそっと揺らす軽やかな風。

それは穏やかに微笑み。

しなやかに強い意志を持ち。

すべてをそっと包み込んでいる。

今という美しい感覚。

yoshi

Photo by Mitsuko.

 

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