【 言葉 】
代官山を後にし、芝浦へとクルマを走らせる。
日曜日の深夜は街も静まり、首都の慌しさが薄れている。
レインボーブリッジの下道を通り、夜の台場へ。
日中は若者たちで賑わうショッピングモールもディナーが終われば閑散としている。
デッキに面した遅くまでやっている、いつものカフェ。
客も疎らなソファ席。
ベイエリアに聳え立つ都会の煌き。
ひっそりと、しかし、活気を秘めた、仮初めの安らぎをとっているかのようだ。
街の静けさに、だんだんと心境が重なり、気持ちが静まっていく。
一杯の香りの余韻。
きょう聞いた話を振り返ってみる。
話をするということは、ただの交友ではなく、感性の交流ではないかと感じている。
もちろん、そうとは思えないことも中にはあるが、
今までは何気なく聞き、それは会話ではあったが、心に響く聞き方はしていなかったのかもしれない。
恋の残響は静かになって始めてわかる。
思い出されてくる何気ない言葉の数々。
引っかかる言葉は、良くも悪くも自分の意識と何かしら合っているからなのだろう。
正当性を反論したくなったところが今の自分の無意識。
根強く存在し、こだわっているものの現れであると。
逆に、こちらが発した言葉も同じように生命感をもって生き続けているのだろう。
それは受け止める人の感性によって、その分量が変わるものだろうが、
言葉とは、表現というよりも内在した感情のエネルギーを表しているもののようだ。
カフェの奥の壁に掛かっているモノクロの小さな写真。
よく見れば、小さな女の子が無邪気に遊ぶ姿を撮った一枚だった。
芝浦の対岸。
デッキに歩み出れば、かすかな潮の香りが、ゆるい街風にのって吹いている。
高いビルとビルの間から東京タワーが聳え照らされている。
今は静かな街並みも明日からはまた動き出す。
それぞれが、それぞれの現実を生き抜き、しかし、求め続けながら。
海浜公園の端を目指してゆっくりと歩く。
足下にやさしく打ち寄せる、さざなみ。
湾岸道路の高架を走り抜けてゆく、乾いた響き。
近づく対岸の灯火が、ゆらゆらと滲んで見えた。
yoshi
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