【  かなしくも幸せなふたり 】

 

 涙を見せるなどありえない。

そのように教えられ、育ってきた。

だから、涙のある感情がなんなのかもわからず、その裏返しとして腹ばかりを立てていた。

いまは、この感情を大切にしている自分が好きだ。

とても愛おしくて、大切に思っている。

いつでも、どこでも、ふいに涙はでるもの。

そんな時にめぐりあうと、最高に幸せ。

これが自分なんだと、もはや恥ずかしさは微塵もなく。

これが生きるということなんだと、プライドなんていう安っぽい価値観を捨て去り。

いつでも、どこでも。

大切にしている。

見つめあい、力強く抱き寄せ、

震え合いながら詰まっていた心が開き、しゃくり上げ、鼻を啜り、ふたりして涙の中で交わっていく。

お互いが、かけがえのない近い存在であると確かめ合い、

お互いが、永遠に離れている独立した存在であると認め合う。

こんなに深い悲しみが、ほかにあるだろうか。

こんなに幸せな悲しみが、ほかにあるだろうか。

ずっと、ふたり。

抱き合いながら。

ずっと、ずっと。

語り合いながら。

いつまでも、いつまでも。

慈しみ、涙して歓び合う。

悲しくも幸せなふたり。

yoshi

 

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